大学研究室紹介

高知女子大学
文化学部

 助教授 青木 淳

青木氏 TEL:088-873-2156(代)
FAX:088-873-2729
E-mail:aaoki@cc.kochi-wu.ac.jp


北寺薬師寺如来像 自由な学びの「場」を探して

 学生時代に経済学、芸術学、美術学、宗教学、日本文化史と専攻を変え、大学もいくつか変わりながら自分の研究のスタイルを作ってきた思い出があります。 何か面白そうだと思うと、すぐに夢中になって追いかけてしまい、気がつくと全く違う学問の世界に没頭していました。 今思うと、こんな自由で幸せな時代を過ごさせてもらったことに感謝すべきですね。



北寺薬師寺如来像

研究者になった頃

 学生時代の最後は、京都の国際日本文化研究センターという研究所でしばらく研究者生活をしていました。 ここでは仏像のお腹の中に残された文書や遺物を一日中、ルーペで読んだり書きおこしたりという仕事をしていました。 この研究に惹かれたのは、古代・中世に生きた人々が、まるで仏像の胎内をタイムカプセルのように利用して、 こっそりと自分の秘めたる思いや信仰生活の一部を書き残していることに気付いたからです。 それからこの研究資料についての研究方法を発表してゆくに連れて、その解析方法が次第に美術史や宗教史、民俗学、 社会学といったさまざまな異なる学問の領域で活用されるようになり、学問の新たな学際領域を構築する醍醐味に触れました。

地域の文化遺産を発掘

 高知に来て、すぐに高知県立美術館で「国宝・弘法大師空海展」という展覧会の企画・運営に関わる仕事をしました。 この企画で私は、京都や奈良の国宝級の文化財を出来るだけ自然な状態で高知の方々に見てほしいと思い、可能な限り展示ケースは用いず陳列をしました。 会期中約十二万人の方が来場されましたが、本物だけが発するオーラを体験していただけた気がします。
 これがきっかけとなって高知県全域の仏像などの文化財の調査事業を国(文化庁)、高知県教育委員会、 高知女子大学が連携して「高知県地域文化遺産共同調査・活用事業」という共同プロジェクトが組織され、 現在も調査事業のほか地域の小中学校などでの移動教室や文化財保護の講習会を行っています。

文化学科と産学連携事業の可能性

 周知のように文科系の学問は、なかなか地域の産業やその活性化に関わる機会がありません。しかし、地域での調査活動などを通じて体験した、 地域のニーズに対する対応、たとえば観光資源の発掘、地域教育の新たな可能性を探るといった分野ではまだまだ利用できる部分があります。 そんな思いもあって、本年度から高知県地域文化遺産共同調査・活用事業と高知県商工会議所、高知県教育委員会の連携で、 四国遍路の文化を次世代に語り継ぐための産官学による連携事業を立ち上げました。近年、四国の遍路みちを世界遺産に登録しようとする運動も各地で起こり、 その礎(いしずえ)となる遍路文化の研究会や講演会、遍路道の整備事業などを学生たちとともに行っています。
 また将来、県が運営する美術館や図書館、植物園などの文化施設を、小学校から大学まで、 それに研究所などの教育機関とより有機的に結び付けてゆけるような仕掛けを考えるべきでしょう。 それは高知県の所蔵する多くの文化的な遺産をこのまま埋もれさせるのではなく、未来の人々のためにいかに活用できるかということを、教師、 そして研究者が積極的に考えてこそ、地域の文化遺産としての意味が見直されると思うからです。

清滝寺薬師寺如来像
清滝寺薬師寺如来像