2008.01 No.244

大学研究室紹介

高知子大学
文化学部 文化学科 文化環境言語学

准教授 橋 尾 直 和
Tel & FAX:088-873-2823

未知への挑戦

 私は大学生時代、探検部に所属しておりました。3回生で部長を務めた時、何か人のやっていないことに挑戦したいと思い、ドラム缶イカダ「ニライカナイ号」を作り、沖縄から九州までの約900キロを黒潮に乗って航海する実験を試みました。結果は、大型低気圧に行く手を阻まれて失敗。しかし、この経験が後に生きてくることになりました。「失敗に学ぶ」−フィールドワークのチャレンジ精神も、大学時代にやった探検・冒険の失敗の経験によって培われたものです。良い意味でのダメもと精神でやってみることが大事だということを学びました。沖縄の島々でのサバイバル体験や冒険、方言調査がきっかけで、言語学者の道を歩むようになりました。座右の銘は、“未知への挑戦”です。

職業としてのフィールドワーク

 大学院に入って、本格的に方言調査を実施するようになり、職業は、ジャーナリストか大学教員か迷うようになっていました。理由は、「ずっとフィールドワークをやって飯を食っていけたらなあ」という考えからでした。東京都立大学大学院の博士課程に通い、沖縄のご出身の中本正智先生(故人)に指導を受け、琉球方言の調査を手がけるようになり、大学教員としてフィールドワークが出来るようになりました。
  縁があって高知女子大学に赴任し、「土佐ことば」の本格的な方言調査を始めました。その後、科研費「環太平洋の危機に瀕した言語」の調査を実施しました。冒険心は尽きることなく、2005年5月、土佐清水から伊豆神津島まで、今度は葦船「カムナ号」で黒潮航海に挑み無事航海に成功、22年ぶりにリベンジを果たしました。
(写真)葦船「カムナ号」2005年5月静岡沖の黒潮航海

地域貢献としてのカンカンサンミンガク(館官産民学)の連携

 いつしか、方言調査の成果を何とか地域に還元したい、という想いが膨らんできました。きっかけは、参加した高知県文化環境部文化推進課による「土佐弁ルネサンス事業」です。
  「土佐弁劇場」という土佐弁による演劇などの画期的な催しを実施しました。高知新聞の「ふれあい高新 in 梼原」の「茶堂談義」で、歴史民俗資料館・前館長の坂本正夫さんと対談し、NHK「ふるさと日本のことば」の監修で、中島丈博さん、国井雅比古アナとご一緒させていただき、ローカルのコーナーで解説しました。土佐学協会と共催の「地域文化デジタルアーカイブ講座」では、講師を務めました。
  これらの活動を通じて、博物館の館、行政の官、産業の産、県民・市民の民、大学のみならず、小・中・高校が連携して、地域おこしにつながる活動・事業を展開していくことの重要性を実感しました。
(写真)「焼畑による山おこしの会」(後列右から3番目が筆者)

文化環境の視点

 現在、四万十かいどう推進協議会副会長、四万十・流域圏学会理事、四万十活性化小委員会副委員長を務め、「四万十かいどう」風土調査を手がけるようになりました。旧西土佐村、大月町柏島のフィールドワークを学生と一緒に行い、地元の人たちの残しておきたい風景・ことばをお聞きし、ホームページに掲載、地域の風土を情報発信し、観光のPRにも役立てていこうというものです。このたび、国土交通省が提唱する「日本風景街道」に、「四万十かいどう」が「土居廓中」とともに選ばれました。最近では、焼畑にまつわる民具の方言と習俗を文化環境の視点から捉え直す調査も行っております。


   〒781-5101 高知市布師田3992-2
   TEL:088-845-6600 FAX:088-846-2556
   E-mail:info@joho-kochi.or.jp