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design デザイン特集


コミュニケーションをつくりだすデザイン
コミュニケーションのパイプを太くする
高知に行くなら鰹を食べなくちゃ、そんなイメージが全国的につき始めたのはいつからだろう。数ある鰹のたたきの中でも、「漁師が釣って漁師が焼いた」(黒潮町明神水産(株)の製造する「わら焼き鰹のたたき」キャッチコピー)おなじみのこのフレーズ、ほとんどの高知県民は印象に残っているはずだ。なぜだか心に響いてくるのは、この言葉が消費者とのコミュニケーションという名のパイプを太くしたからだと梅原さんは言う。
わかりやすく伝えるためにコミュニケーションのパイプを大きくする、そこに感性が必要になってくる。言い方ひとつで人の受け取り方が違う。「こうてやータタキ」なのか、「漁師が釣って漁師が焼いたき、こうてや」なのか、その感性がデザイン。CMで「漁師が・・・」流れ始めたとき、子供がそれを口ずさみながら遊びだした。それは子供にも伝わりコミュニケーションができたということに他ならない。
梅原さん自身、最近気がついたことだと言うが、今あらためて、売上が上がった商品を分析してみると、全部この「コミュニケーションデザイン」の範疇に入っていたという。
「じつは茶どころ しまんと緑茶」も短いが立派にコミュニケーションをつなぐ。地元のおじいちゃんとおばあちゃんを入れて、自分たちを伝えるビジュアルを作り、素早く相手と交流する。風景がコミュニケーションをしてくれる。
今年の第五十九回日本観光ポスターコンクールの最高賞「金賞・国土交通大臣賞」を受賞した「やんばる ふんばる 国頭村」のポスターもそうだ。直接環境がどうのこうの謳っているわけではない。でもポスターを見てメッセージが伝わる(コミュニケーションが成立)と、その土地に行ってみたいなぁと興味が湧き、商品も売れていくのだ。その大きなパイプを作る役がデザインである。
モノはデザインがいいから売れるのではない、かっこいいものを作るから売れるのではない。コミュニケーションデザインがよくできているモノが売れる。デザイナーはうまく相手とコミュニケーションすることを作り出していくことを期待されているのだ。
そんなコミュニケーションデザインのスイッチをパチンと入れてもらいに、梅原デザイン事務所には、全国から様々な依頼が飛び込んでくる。
市町村合併により日本で唯一の飛び地村になってしまった和歌山県北山村。秘境と呼ばれる人口500人の村だ。この村にここだけしかない在来種のみかん「じゃばら」がある。ご多分にもれず果汁を使ったじゃばらドリンクを作るものの、さっぱり売れない。そもそも「じゃばら」って?、魚なのか、何なのか、わかりにくい。「なんでじゃばらなの?」梅原さんの質問に思わぬ答えが返ってくる。「邪気を払うから来たじゃばらです。」「それを早く言ってよ」
じゃばら商品のパッケージは「邪払」を印鑑風にデザインしたスタンプを押したパッケージに一新される。なんだかパワーがありそう。「ゆずでもない、すだちでもない、とんでもない紀州の変なみかんじゃばら」一気にコミュニケーションデザインができあがる。今春、じゃばらが花粉症に効果ありという岐阜大学の研究成果が発表されたというおまけも付き、じゃばら商品は楽天市場で大ブレイクした。
じゃばらのポン酢も元々あったが、名前を変更。じゃばらのポン酢だから・・・「じゃぽん!」失礼にも思わず笑ってしまったが、でも笑いが生まれるということはコミュニケーションができたからだと言う。「お笑いは笑えるからおもしろい。力のない、笑えない漫才は苦痛、コミュニケーションがないデザインは笑えない漫才してると一緒なのかも。」
価値観のスイッチを入れ替える。
梅原さんのコミュニケーションデザインの新しい取り組みが始まる。ご存じのとおり、高知県は森林率84%という全国一の森林県。でもその山々のほとんどは、外材に押され赤字続きで、84もどちらかというと負のイメージ。しかし今、森林はCO2を固定化してくれて、排出権取り引きでお金になるものに変わってきている。時代が変わり、価値観のスイッチが入れ替わって、振り向いてみたら地球を救うCO2を吸収するマシーンが84%も山にあることになったのだ。コミュニケーションデザインによってこのメッセージを伝えたい。まず84Tシャツを制作し、山仕事のおじさんに作業着として使ってもらおうと考えている。「おんちゃん背中の84って何?」「日本一の森林率を知らんかや」山仕事を誇りに思ってもらいたい。今後この84プロジェクト、高知県が持つさまざまな資源のブランド化を目指す構想で、数字にちなみ8月4日に本格始動する。
