情報プラットフォーム 2010年7月号 No.274

特集 高知の夏 定番商品

吉平商店 30年経っても残るものを

高知城の下や学校帰りの駄菓子屋、お祭りの縁日、日曜市…。高知で育った人なら誰もが小さい頃に1度は飲んだことのある「冷やしあめ」は、夏の高知の「懐かしい飲み物」の代表ではないだろうか。そんな夏の風物詩とも言える「冷やしあめ」のある風景も、近年はだいぶ少なくなってきている。

そんな中、昔懐かしい「冷やしあめ」と「あわせしょうが」を製造・販売し、日曜市にも出店している須崎市の「吉平商店」の代表者である吉本さんを訪ねた。

◆定番中の定番

取材に訪れた暑い日の昼下がり。涼しげなグラスに氷のたっぷり入った「あわせしょうが」をいただくと、甘さの中にもさっぱりとした、さわやかな生姜の味わいが口の中に広がった。昔ながらの冷やしあめは、店先ですりおろした生姜を入れてもらうというのが主流だが、生姜のエキスと砂糖を一緒に炊くのが吉平商店流。生姜と上白糖だけで仕上げた赤いキャップの「あわせしょうが」と、生姜に4種類の砂糖と水あめをブレンドした黄色いキャップの「冷やしあめ」の2種類を製造している。

そもそも吉本さんの父親は菓子職人で、菓子を製造するかたわら、夏には冷やしあめを作って縁日などで売り歩いていた。そして吉本さんも、菓子や冷やしあめの製造に携わるようになった。しかし、その頃は冷やしあめは高知であまりにもポピュラーな飲み物だったため、商品化するという発想はなかったそうだ。

転機がおとずれたのは、約8年前。日曜市で飲み物として出したり、イカ焼きのタレとしても使っていた今の「あわせしょうが」の原型を、ビンに詰めて県外の知り合いのところに送ったのがきっかけ。「もっと欲しいが、どこで売っているのか」という問い合わせを機に、6年前にまず「あわせしょうが」を商品化。続いて3年前には「冷やしあめ」を商品化した。

◆「あわせしょうが」と「冷やしあめ」

商品化にあたっては、昔ながらの味を残しながらも、味のバランスがとれるように研究を重ね、何種類もの試作を行った。その結果、どちらのタイプも、通常冷やしあめに使用する麦芽糖を使わず、「あわせしょうが」には上白糖のみを使用。甘みの中にも生姜の豊かな風味を残し、夏は氷を入れて水割りやソーダ割り、冬はお湯割りという定番の飲み方だけでなく、豚の生姜焼きや煮魚等にも使える、すっきりとしたタイプに仕上げた。一方の「冷やしあめ」には、黒糖など4種類の砂糖と水あめを使うことによって、生姜の香りを残しつつもコクのある、昔懐かしい「夏の定番」タイプに仕上げ、「吉平商店」の味を作り上げた。

◆原点は日曜市

近年では、県内のコンビニエンスストアやスーパーストア、通信販売などでの販売も好調で、2年前には工場も拡張。今では売り上げの90%を県外客が占める。テレビや雑誌にも取り上げられ、日曜市で飲んだお客さんからの問い合わせも多い。それにともなって「PBを作ってほしい」 「違うバリエーションを」という話もある。しかし、吉本さんは、「うちは日曜市が原点。冷やしあめは、昔から子供が小遣いを握りしめて駄菓子屋に買いに行ったもの。誰もが気軽に飲めるものを提供したい」という考えから、そのような話は断っている。

「冷やしあめは高知の食文化。昔は駄菓子屋さんそれぞれが冷やしあめを作っていて、それぞれに味が違った。どれがおいしいとか、おいしくないではなく、それぞれの味があった。100人いれば100の好みはあるけれども、どこか懐かしく飽きのこない、30年先も愛されるものを作りたい」という思いで、吉本さんは、これからも地道に冷やしあめを作っていく。

■吉平商店 〒785-0030
高知県須崎市多ノ郷甲1139-72
TEL・FAX 0889-43-0107