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研究開発型企業としてFabLessで飛躍!株式会社 シンテック
大手ゼネコンからも頼りにされる定置式小型コンクリートポンプのメーカーがあると聞き、高知市一宮にある株式会社シンテックの田所社長を尋ねてお話しを伺った。
開発のきっかけ
若くして金物店を立ち上げた田所社長が、土木に将来性を感じて建設機械や資材を取り扱っていたころの話である。「土木用生コンクリートが送れる小型ポンプはないか」。ユーザーである建設業の方々から要望が寄せられていた。社長自身も「取り寄せたポンプは売れているが、表示どおりの能力を発揮していないのでは…」という心配があった。「良いものが出来ればニーズはある。また、自社の将来を見据えた時、自社商品も欲しい」そんな思いでいたとき、愛媛県の建設業者からポンプのアイデアが持ち込まれた。これが開発のスタートとなった。
コンクリートポンプ完成
思い切って取りかかったが…商品開発は、大変苦労したと振り返る社長。
最後は、高知のエジソンといわれた故 垣内保夫氏の率いる⑭垣内との連携で開発着手から足掛け4年。昭和57年2月にシンテックの基盤となる記念すべき第1号が誕生した。
この機械は、独自の機構により、高効率に吸い込んだ生コンを一直線に押し出す仕組みで、これまでのポンプのように曲線的なパイプを使用していない。このため小型でも強い力で生コンを押し出すことが出来る。
登録商標であるシンテック160―40―8は、呼び強度160㎏/㎠(当時の単位。現在の表記では、16N(ニュートン)/㎟)、スランプ8㎝、最大粗骨材寸法40㎜(当時ターゲットとしていた土木に用いられる生コン配合の呼び方)の圧送ができることを象徴的に表現したものだ。
分かりやすく感覚的に言えば、粘りの少ない大きな骨材を含む生コンをスムーズに送ることが出来るというものだ。
昭和61年に全国販売を開始したこのポンプは、性能が高く故障が少なく取扱いやすい小型コンクリートポンプとして全国に広まっていった。昭和62年1月には、第1回高知県地場産業大賞を受賞している。
ビジネスモデルの変更
シンテックは、当初から自社に生産工場を持たずに、製造は前出の⑭垣内に完全外注し(いわゆるFabLess[ファブレス]メーカー)、トータルコストを削減している。
製品は高性能ぶりが評価され売上は順調に伸び、全国シェアが70%以上を誇るまでになった。しかし、公共事業の減少により売上が頭打ちとなり、平成8年には、13億円を突破していた売上が大きく落ち込んでいった。そこで、新たな柱として取り組んだのが、自社機のレンタル事業の強化と自社ポンプを応用した用途開発の二つだ。
シンテックは、自社機の優れた耐久性・簡単な操作性・高い信頼性を生かしたレンタルの仕組みを拡充することなどにより、売上にこだわらず、利益を確保していった。レンタル事業は、設備投資を抑制したいユーザーのニーズにマッチし総利益の半分近くを担うまでに伸びている。
またシンテックは、ポンプの販売をする企業という発想ではなく、生コンなどを圧送する技術を持つ企業として、のり面等での吹き付け工法の特許を取得し、お客様の建設業者と共同で実績を積み上げていった。さらに専用機の開発を行い、焼却炉や鉄鉱炉の炉材の吹き付け・圧送工事で好評価を受け、活用されていくなど、産業分野へも進出し、事業の範囲を拡大していく。最近では泥土等を自吸圧送できる「マッドソイルポンプ」を開発するなど、環境分野にも力を入れている。

良い会社を目指して
企業としては、顧客のニーズに応えること。これが基本。もう一つが、頑張った社員に適正に報いること。シンテックの従業員は、全員が正社員。会社の利益が出た場合は、それを社員に還元する仕組みを導入している。
また、社員の人材育成にも力を入れている。
社員の希望を募りセミナー等にも積極的に参加させている。ただし、特別な場合を除いて、本人が希望しない研修等へは強制的に参加をさせない。「自発的に参加をすることでこそ本人の役に立つ」という社長の信念による。
海外市場をねらう
海外市場についても目を向けている。ただ、機械メーカー独自の課題がある。幾ら性能の良い機械でもメンテナンスは必要。修理や消耗部品の交換はどうするのか? そのたびに日本から出張することは難しい。
例えば台湾の新幹線工事。落札した日本企業がシンテックのコンクリートポンプを数台持ち込むことを先に決定した。シンテックとしては、顧客のニーズに応えなければならない。そこで人的ネットワークを活用してメンテナンスのできる現地代理店を開拓。シンテックに技術者を呼んで整備方法等の研修を行っている。
現在、海外展開に当たっては、高知県のシンガポール事務所の支援も受けて、東南アジア中心に事業展開している。シンテックが関係しているもので(中古機械等で転売されたものは把握できていないため)ベトナム・フィリピン・タイ・マレーシア・スリランカ・ミャンマー・台湾・韓国・ロシア・カザフスタン・ウズベキスタン・イランなどに導入済み。遠くは、アフリカのアルジェリアにも導入されている。
先般は、高知県が主催したフィリピン経済ミッションにも自社から2名が参加。コンクリートポンプの実機を持ち込み、積極的にPRした。既にいくつかの商談が進んでいるという。
ただ、海外展開のもう一つのネックが価格。日本では、高性能で長持ちするシンテックの機械は、信頼されており、価格が高いことも飲み込んでもらえる。ところが、海外では、まず価格をいわれる。「他社製品の1.5倍強」をどうするかが課題。
製品のレベルも国産のものほど必要ないこともある。これからは、海外向けの商品開発も課題の一つだ。
これからの展開
苦労の末開発した、コンクリートポンプの構造は、他の分野にも応用出来る。現在は、異業種間での共同開発などを含め、産業分野などでのさらなる活用を目指し、複数の開発が進行中だ。
(社)高知県工業会で人材育成委員会に所属する田所社長にとって、若者の就職ができない状況に心が痛むという。
Sincerity もっと誠実に
Youthful もっと若々しく
Market もっと市場をみつめ
Technology もっと技術を磨き
Earth もっと地球的視野で
Creation もっと創造性を
これらが、シンテックのモットーだという。基本技術に磨きをかけてニッチの幅を広げて活躍して頂きたい。

TEL 088-883-1755 FAX 088-883-1754
URL http://www.symtec.co.jp/