情報プラットフォーム 2011年1月号 No.280

特集 ニッチトップ企業

社業を通じて切花生産者をバックアップ株式会社 中村農園

龍馬効果でにぎわう桂浜より少し西、長浜の静かな住宅地の中に株式会社中村農園がある。現社長のご尊父 中村利道氏が創業し、2010年には創業55年、会社設立20年を迎えた。今では、切花栽培用ゆり球根の取り扱いで国内トップ企業に成長している。

柔和な笑みをたたえた中村裕司代表取締役社長にお話を伺う。

球根産業の国際化

両親の「家業を継いでほしい」とのたびたびのラブコールを受けて、中村裕司氏は大手生命保険会社を辞めて、1989年中村農園に入社した。そして、それまで国内産の球根販売をし、球根産業も国際化していくことになると予想していた先代から、その輸入球根の取り扱いを託された。

中村裕司氏は、この業界に売り手市場的な体質を感じ、より多くの顧客の声を聞くために切花生産者である農家を訪ねた。その中で、農家に喜んでもらえる情報を幅広く提供する必要性を強く感じたという。そして、農家は品質のいいものを作りたい、いいものを作るための技術ならば受け入れられるとの考えから、1992年に南欧で学んだプレ・ルーティング・システム(※)を日本で初めて紹介するなどの取り組みを進め、1998年には先代に代わって社長に就任をしている。

様々な取り組み

中村農園では、球根生産地に出向き又は駐在して最新の情報を収集し、農家への情報提供をしている。球根は品種又は生産地によって異なる性質を持つため、試験栽培や海外での情報収集・調査を踏まえ、日本の気候や環境、栽培時期にあった品種を選定して輸入している。

ゆりの切花は60~70%は冠婚葬祭用で、時期ごとに出荷される量が極端に変わると使いにくいこともあるので、なるべく長い期間切花を安定供給できるよう球根の周年出荷に取り組んでいる。更に、香りを抑える、花粉を垂れにくくする等の花屋の立場での品種改良にも、生産地の協力を求めて取り組んでいる。それらによって、マーケット自体を大きくするように努力をしている。

2007年には試験栽培用温室(試験農場)を建設し、育種会社等との連携で、日本最大規模の品種試作展示を行っている。

そして、試験農場を建設した年から「ゆりフェスタ」を開催している。これは社員のアイデアで、農家に新品種等を見てもらい、近所の方々にも喜んでいただこうと始めたイベントであった。今は、施設のスペースや安全上の問題から事前申込制に変更しなければならないほど、多くの流通関係者、花屋及び県内外の一般客の来場がある。また、「生産者と流通関係者の交流の場」として、講演会の開催や商談ブースを設け、花屋・流通関係者・生産者のビジネスマッチングも行った。更に、一般の方・生産者・流通関係者・花屋等の入場者にアンケート調査による情報収集も実施している。このフェスタでは、切花ではなく実際に生育している花を展示しており、品種本来の性質を確認できたとの生産者の感想も寄せられている。なお、第3回から、多くの花が開花した状態でいっぺんに見られる同時開花に取り組んでいる。第4回では473種を植えて、445種の同時開花がみられたとのことである。

また、ホームページでは、「ゆり品種検索(データベース)」を掲載し、生産者を始め、多くの関係者への情報提供をしている。このデータベースには2千種ほどが登録されており、開花写真とカタカナ名、交配系統、開花色等のデータが得られる。

2010年2月には「e︱キューコンドットコム」を開設して、個人向けに冷蔵ゆり球根等のインターネット販売も始めた。これは、「一般(消費者)の方の方の好みや意見を知りたい」と思って始めたとのこと。

現状と今後

全国のゆり球根の輸入量は、ピークであった1999年の2億球近くから1億4千万球と、30%近く減少している。しかし、そうした中にあっても、中村農園は取扱球数で30%以上の成長を遂げ、年間で3千万球以上を取り扱うようになり、2008年には、「冷凍・冷蔵技術による高品質ユリ球根の安定出荷・新品種開発」で、農林水産省と経済産業省による「農商工連携88選」に選定されている。また、同年の「ジャパンフラワーフェスティバル2008 in こうち」においても、金賞「高知県知事賞」を受賞するなど、高い評価を受けている。

「お客さまからの要望・提案を聞くと、私たちの至らない部分や期待されていることに気付く点がたくさんある」 「私も含め、年末の顧客訪問では、普段、事務所内で仕事をしている者も全員行くことにした。うちの社員は、事務とか営業とかの区分はなく、全員が総合職ということで行ってもらっている」と中村社長は語る。話を聞けば、すべきことが見えてくる。

「百合以外の取組みもしているが、強みは百合か」 「百合だけでいいのか、別にもっといいものはないのかと常に思っている」と中村社長は語る。会社案内に紹介されている新入社員の言葉「変化を恐れない会社と社員」。まだまだ、これからも成長していく会社と感じた。

※プレ・ルーティング・システム
球根を定植前に低温処理することで、芽を伸ばし、発根を促進させる技術で、夏季の切花品質を高めるもの

■株式会社 中村農園 〒781-0270 高知県高知市長浜5381-2
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