情報プラットフォーム 2011年1月号 No.280

特集 ニッチトップ企業

土佐の打ち刃物を支え続ける鍛造機械メーカー!!有限会社 坂本鉄工所

国内でも有数の打ち刃物の産地、土佐山田町に昭和8年に父 坂本南夫海氏によって創業された鍛造機械メーカー坂本鉄工所がある。ベルトハンマー、圧延機、プレス機など伝統の自社製品を作り続け80年近くになる。その三代目社長の坂本税氏にお話を伺った。

伝統の打ち刃物業界を支える鍛造機械メーカー

平成10年に経産省より伝統工芸品の指定を受けた県地場産業を代表する土佐打ち刃物の製造技術は、鉄を鍛造して刃物を造る「自由鍛造製法」という技術を継承している。「自由鍛造製法」は、ハンマー一つでどのような形の刃物でも成型する技術だ。この製法が、プレス成型によって製造している他県の量産品と大きく異なる日本伝来の製造技術で、本県で脈々と受け継がれている。

こうした打ち刃物の業界を支え続けている機械メーカーが坂本鉄工所だ。当社が、昭和8年に開発したベルトハンマーは、刃物の生産性を大幅に向上させた。1日1人の生産量が30~40丁だったものが100丁以上と機械化により大幅に向上したという。また、昭和40年頃より、産業用機械の自動制御が多用されるようになり、焼入機、プレス、搬送機などの自動制御機の製品開発を手掛けるなど、刃物業界の近代化にも貢献してきた。

この打ち刃物を造る機械を主力としているメーカーは、国内では当社のみとなってきており、刃物用鍛造機械の国内シェア70~80%を占める。ちなみに、西日本では100%に近い。

一方、需要先である打ち刃物業界は、刃物の需要自体減少傾向にあるといった構造的な課題を抱える産業の一つで、刃物メーカーは減少しつつある。昭和50年台には、土佐山田周辺に200軒程度あった刃物工場が、現在は50軒程度にまでなっているという。

当然、刃物を造る機械メーカーも淘汰されてきた。このような業界の中で、技術開発力を活かし勝ち残ってきたのが坂本鉄工所。ニッチな市場ではあるが、高いシェアを獲得、その存在感をますます増している。

近年では、工業製品から手造りへの流れの中で、美術や趣味に類する手作り刃物が珍重され脚光が集まるようになってきている。こうした新しい市場も出てきていると期待を寄せる坂本社長。現在は、トヨタ系の企業で修行を積んだ後、当社に入社し22年目となる専務取締役で長男の洋一氏が、刃物業界を支え続ける機械メーカーの後継者として現場で活躍している。

地場に根ざす技術開発型企業

創業時より、様々な製造業と関係を築いてきた歴史を持つ。そんな中で、技術開発力が磨かれてきた。坂本社長は、技術の成長過程を、第一期がメカ(機械)の時、第二期が機械とエレクトロニクス(電気制御)の組合せ、第三期が機械とコンピュータ(電子制御)との組み合わせといった三段階に分けている。また、工業技術センターからの支援や県内外の企業との協力体制も整えてきており、地域に根ざした技術開発型企業として歴史を重ねてきた。

「子供の頃から、機械だけでなく無線やコンピュータも好きでした。扱い方より、むしろメカの構造や原理まで理解せずには居られない性格で、これが、今のモノづくりの基になっていると思います。長年培ってきた技術を活かし、お客様の細かな要望に応じた高付加価値型の機械を提供することに心がけています」と坂本社長。「自分の持っている技術が、色々な業界のお客様に役立てて貰えれば、こんな嬉しいことはありません」と熱もこもる。当時より、機械メーカーとして、様々な業種の機械を設計から製造まで一貫して行ってきており、ハードとソフトを一緒に売る強みがある。

高知のものづくりに思う

坂本社長は、根っからの技術者である。高知のエジソン故垣内保夫氏とは、生前交流も深く県の工業技術振興に一役かってきた。現在でも、高知県工業界の技術者が多く加盟する「土佐技術交流プラザ」では会員歴25年を超える現役会員である。発足当時からの主要メンバーで、知恵袋的存在である。また、「高知県メカトロ技術研究会」の会長も務めており、県を代表する多くの機械技術者達とのネットワークを持つ。

「独自の技術による高付加価値のものづくりをしていかないと駄目です。高知で成功しているのは、市場の限られたものづくりをしている企業が多いことです。エネルギーやエコといった世界的潮流もあるが、もっと木材や農・園芸などに目を向け、伝統の技術を活かした県独自の産業を創り出していくことも大切だ」と高知でのものづくりへの思いを語る坂本社長。

企業連携でものづくりに挑戦

帯屋町アーケードの途切れた部分、高知市中央公園の北側にオブジェのような開閉式のパラソルがある。今では、待ち合わせスポットの一つとなっている帯屋町パラソーレ(通称:帯パラ)だ。雨を関知して自動的に大きな傘が開く装置である。「建築、土木、テント、金属、電機関係など県内の色々な業種の方と一緒に造りました。当社が担当したのは、傘本体の装置でしたが、ものづくりのプロの人達と一緒になって一つの物を造る楽しい仕事でした」と人的なつながりが重要という坂本社長。当社が取り組む企業間連携によるものづくりの一例だ。

最近では、土佐プラのメンバーと共に「小水力発電装置」の開発に取り組んでいる。自然エネルギー利用の研究にと、当社が幹事企業となって技術開発から製品化まで行った。今年3月に土佐山田町の女夫ケ池に試作第1号機を設置、12月には、いの町のグリーンパークほどのに第2号機を設置するなど、坂本社長のものづくりへの挑戦はまだまだ続く。

■有限会社 坂本鉄工所 〒782-0031 高知県香美市土佐山田町東本町4-4-17
TEL 0887-53-4101 FAX 0887-52-4101
URL www.i-kochi.or.jp/prv/t-s/index.html