情報プラットフォーム 2012年2月号 No.293

技術・アイデア活用 特集

介護食になかった介護食
嚥下困難者の「おいしい」の言葉を聞くために
株式会社 アオイコーポレーション

介護食「そふ菜」花形ニンジンの形そのままでとろけるやわらかさ

老人ホームウェルプラザやまだ荘内に、高齢者の皆さんが元気に参加する音楽が響いている。こうした福祉施設や、病院、ひいては地域の在宅高齢者のお弁当まで、すべての利用者に3度の食事をおいしく楽しく食べてもらうことを目的に、グループの食事を一手に引き受けるのがアオイコーポレーションだ。栄養事業部の部長であり、「ふるる」「そふ菜」プロジェクトの開発メンバーである小山美根子さんにお話を伺った。

プリン状介護食「ふるる」開発

食事を担当する老人ホームの入居者に低栄養状態の方がいた。歯の状態や高齢による嚥下力と食欲の低下などなどいろいろな事情で食べられない、飲み込めないこと(嚥下障害)が原因だ。当初は、ペースト状にしたものやミキサーで砕いたものなどをそのまま出していたが、水で薄めたりするため、どうしても栄養が十分に取れない。水でかさが増えた分だけ量が多くなり、ただでさえ食欲がないのに食べきれない、そしておいしくない。魚をミキサーにかけると生臭くなり、「こんなの食べられない」という声が上がったりもした。

試食を繰り返して品質を上げる「(低栄養者の食事を)なんとかできないだろうか」管理栄養士である小山さんたちの挑戦が始まった。最初は寒天で固めてみたが栄養が足りないのは同じ。そこでビタミンを入れてみたり糖質でエネルギーを上げてみたり、玄米の粉を入れてみたり様々な工夫・努力を重ねた。栄養を元の状態に近いもので食べやすく、食材そのものの風味を損なわないよう、何よりおいしく。次々と試作を続けていくうち、「食べられなかった方が食べられるようになってきた」「食事ができて元気になってきた」そんな情報をもらえるようになるとがぜん面白くなり研究にも拍車がかかった。そして平成16年、プリンタイプの介護食「おそうざいふるる」が完成する。プリンはきざみ食やミキサー食と違い、口の中に粒が残らないので、つまりや誤嚥を防ぐことができた。

一番苦労した点は硬さの標準化。高知県工業技術センターに毎日通って硬さを調整し、試作品は実際に利用者の方に食べてもらいながら評価を集めた。「最初はあまりにもいろいろ言われすぎて頭に来ることもありましたが、グループのスタッフの厳しい意見があったからこそ、ここまで成長できたと今では感謝しています。」

嚥下障害介護食「ふるる」

見た目もおいしい介護食「そふ菜」誕生

「ふるる」は嚥下困難者の毎日の食事として定着し、順調に種類も増えたが(100種類)、やっていくうちに理想はどんどん高くなる。プリン状で形が同じなため「これって食材つぶして固めただけでしょ」「(見た目で)中身が何か分からない」と言われることも。しかし大豆やニンジンなど、野菜を鍋でやわらかくなるまで煮てしまうと煮崩れてとけてしまう。

そんなとき広島県立総合技術研究所の開発した「凍結含侵法」に出会う。植物組織内部に植物崩壊酵素を急速に導入する技術で、食材の形状を保持したまま任意の硬さに調節することができる。これで食材は形を保ったままやわらかくなったが、今度はやわらかすぎて持ち運べない。「どうしよう、固めてみようか?」。そこで「ふるる」の技術を活かし、野菜の形状がそのまま見えるゼリータイプの介護食「そふ菜」が完成する(平成22年)。

栄養改善学会で発表、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会などで展示するとすごい反響が返ってきた。大手食品メーカーにも「これはすごいよ、あっぱれやね」「懐石料理みたい」等と評価され自信になった。現在、全国から引き合いがあり、肉・魚など惣菜全般への応用と生産量アップを検討中だ。


「そふ菜」と「ふるる」はインターネットでも販売しており、開設1年で特に広告もせずに、口コミやリピーターで順調に売上を伸ばしている。「『(今まで携帯できる介護食がなかったので)一緒に旅行へ行けるようになった』『(しばらく食べられなかったので)味が懐かしい』など、喜びの声をいただくとやっててよかったと思います。」


試食をさせていただいたが、舌でつぶせる柔らかさと、出汁のうま味がしみじみしみこんだ感動の味。懐石料理と言われるのも納得のレベルで、すき焼きや筑前煮など、形はプリンでも口の中は複雑なお惣菜の味がそのまま再現されるという、なんとも不思議な感覚に襲われる。形状・栄養へのこだわりだけでなく、おいしさの追求にも妥協しない姿勢が利用者の支持を得ている。

株式会社 アオイコーポレーション

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